丸いお城と鯛の天ぷらと

田中城

たなかじょう Tanaka-Jo

別名:亀甲城、亀井城、徳之一色城

静岡県藤枝市西益津

(史跡田中城下屋敷〜西益津小学校付近)

城の種別

平城

築城時期

天文六(1537)年

築城者

由比美作守正信

主要城主

由井氏、長谷川氏、山県氏、依田氏、酒井氏等

遺構

水堀、土塁、移築櫓、移築門 等

田中城下屋敷<<2001年07月07日>>

歴史

もともとは今川氏の属将であった由比美作守正信が在城していた徳之一色城が前身であった。永禄三(1560)年以降、長谷川紀伊守正長が在城していたが、永禄十三(1570・元亀元年に改元)年正月、花沢城を攻める武田軍に包囲され長谷川正長以下一族21名、総勢300名は開城降伏した。

武田信玄は馬場美濃守信春に命じて徳之一色城を改修させ、田中城と改称し駿河支配の支城となった。永禄十三(1570)年九月に改修は一応完成し、信玄は城将に山県三郎兵衛昌景を任じた。元亀三(1572)年には西上作戦を前に城将を板垣信安に交代させた。

信玄の死後、武田勝頼は天正二(1574)年二月に高天神城に侵攻し翌月に攻略、遠江に侵出を図るが、天正三(1575)年、長篠・設楽ヶ原合戦で大敗し甲斐に退去すると、この機に徳川家康は掛川城の城兵をもって武田氏の諏訪原城を攻略、田中城をはじめ西駿河の武田氏の支城網を分断した。
天正六(1578)年、家康は田中城、小山城、持舟城を攻撃、三月には横須賀城を築城して本陣とし、高天神城を包囲した。天正九(1581)年三月、高天神城は落城、翌天正十(1582)年二月、織田信長・徳川家康は甲斐・駿河に侵攻、田中城には依田信蕃、三枝土佐虎吉が守備して徳川勢と激しく抗戦したが、武田一族の穴山信君の寝返りによって孤立した依田信蕃は三月一日、降伏開城した。

慶長五(1600)年の関ヶ原の役の後、翌六(1601)年に徳川譜代の酒井忠利が入城し外郭の惣構えが拡張された。以後、松平忠重、水野忠善、松平忠晴、北条氏重らが目まぐるしく城主交代し、享保十五(1730)年に上野沼田城から本多正矩が四万石で入封した後は本多氏歴代が在城、明治元(1868)年に廃城となった。なお、駿府城で隠居生活を送っていた徳川家康は鷹狩りのために度々田中城を訪れていたが、元和二(1616)年一月、御用商人茶屋四郎次郎から、上方で流行している鯛の天ぷらの話を聞き、その場で揚げさせて食べたことが原因で腹痛を起こし、体調を崩したまま同年四月に七十五歳で没した。

全国的にも非常に珍しい、同心円状に展開する縄張りで有名な田中城ですが、現在は宅地化や学校の建設でその様相を大きく変えてしまい、ごく一部の土塁や堀の残欠を除いては、その特異な城の姿を見ることはできません。しかし、付近の詳細な地図を見ると道路や宅地が本丸跡である西益津小学校付近を中心に丸く取り巻いていることに気づきます。ぐるっと一周歩いてみましたが、なかなか広大な城で、しかも道がぐるりと丸く取り巻いているので地理感のない自分は現在位置を見失いそうで、あやうく住宅地の中で遭難(?)しかかりました。なお城下の下屋敷には田中城の移築の櫓や庭園、土塁の一部、当時の民家などが復元されており、ちょっとした歴史公園になっています。駐車場はここのものを借りましょう。

遺構はわずかですが、周囲の農地などを見るとかつての低湿地がおぼろげながら想像でき、平城とはいえなかなかの要害であったことを伺わせます。家康も力攻めで簡単に陥とせる城ではないと認識していたようで、遠巻きに鉄砲を射ち掛けたり田畠薙ぎなどの嫌がらせ作戦で城兵を刺激したりしていたようです。

近世にさらに拡張され、幕末まで続くのですが、近世田中城のエピソードとして有名なのは「鯛の天ぷら」でしょうか。当時上方で流行っていたという「鯛の天ぷら」を食した家康は直後に激しい腹痛に見舞われ、その後駿府城で没したというもの。やはりこれも食中毒とかの一種なんですかね?でも天ぷらって一応火に通すわけだし、食中毒っていうのはあるんでしょうか?そもそも鯛って天ぷらにして食べるもの?

下屋敷に移築現存している本丸櫓。もちろん近世のものでしょう。 下屋敷には左の櫓のほか、厩、中間部屋、茶室、農家などの移築建築物が並んでいます。また、当時の庭園や土塁の一部が復原されています。

厩には馬が!ちょっとびっくりしましたがよく見ると作り物でした(笑) 本丸付近は学校の敷地などになっていて、全く当時の面影を残すものはありません。

ほとんど唯一、当時の田中城の姿を垣間見ることができる「三之堀」。土塁と、三日月堀が残ります。 城下の旭傳院に移築現存されている伝・移築城門。

 

交通アクセス

東名高速道路「焼津」ICより車10分

JR東海道線「焼津」駅より徒歩15分。

周辺地情報

花倉の乱で有名な花倉城(未見学)など。

関連サイト

 

 
参考文献 「日本城郭大系」(新人物往来社)、別冊歴史読本「武田信玄の生涯」 (新人物往来社)、別冊歴史読本「徳川家康その重くて遠き道」(新人物往来社)、別冊歴史読本「戦国古城」(新人物往来社)、別冊歴史読本「検証 戦国城砦攻防戦」(新人物往来社)、「現地解説板、「下屋敷」配布パンフレット

参考サイト

武田調略隊がゆく

 

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