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落魄の名門・那須氏の哀歌

佐良土城

                                                  

さらどじょう Sarado-Jo

別名:

土塁と水堀痕

<<2005年01月30日>>

所在地
栃木県大田原市佐良土
埋もれた古城マップ:栃木編
交通アクセス

東北自動車道「矢板」IC車30分。

公共交通は不明

行き方・注意点

佐良土小の南東約300m。 現状畑地・宅地。小さな標柱あり。現状畑。

【基本情報】

築城年 不明 主要遺構 曲輪、土塁、水堀痕
築城者 不明 標/比/歩 標124/比0/歩0.
主要城主 那須資晴 現況 宅地・畑

【歴史】

天正十八(1590)年の小田原の役に際し、烏山城主・那須資晴は豊臣秀吉に遅参を咎められて領地を没収され、この佐良土城に蟄居した。那須資晴は慶長十四(1609)年までこの佐良土城にいたという。那須氏はその後福原周辺に五千石を与えられ、子の資景にも五千石が与えられて大名に復帰し、福原城の一角に陣屋を設けた。

【雑感】

かの那須与一宗隆を輩出した那須氏、戦国をたくましく生き残った那須氏、その名門、那須氏を待っていたものは・・・全領土没収の上、蟄居謹慎だった・・・。場所は那珂川と箒川が合流する低湿地、周りに広がるススキの穂、そして那須資晴は囲炉裏端で川のせせらぎを聞きながら、苦い杯を飲み干した。お家を潰してしまったことをご先祖様に詫びながら・・・。うむむ、侘しい、侘しすぎる。演歌の一曲も歌ってあげたい気分だ。

例によって例のごとく、天正十八(1590)年の小田原の役では、関東の伝統的な武士団の多くが改易や領土縮小などの憂き目に遭いましたが、この下野の名族にもその嵐が吹き荒れました。那須資晴は小田原の役遅参の由により、全領土を奪われ、この葦とススキの覆い茂る低湿地の佐良土城で蟄居する破目になってしまいました。どこの誰とも得体の知れぬ者が関白にまで登り詰め、「平家物語」のワンシーンを飾った名門の那須氏が蟄居謹慎。那須資晴、いかなる気持ちであったか、心中お察し申し上げます。

まあ、その後まもなくして福原五千石、さらに息子の資景にも別途五千石を与えられて小なりとはいえ大名の座に復帰するのですから、なんとか名門としての体裁は保てたかな、という気もします。やがて那須氏はふたたび由緒正しき烏山城に帰っていくのですが、このときの那須氏の当主・資弥は那須氏の血の者ではなく、増山弾正正利の弟かつ、四代将軍徳川家綱の生母、於良久の方の弟、要するに家綱の叔父、家光の義理の兄弟にあたる人物だったわけです。さらにその資弥にも子が無く、津軽信政の次男を養子に入れるも、ここでお家騒動が勃発、結局烏山領を没収され、最終的には旗本となって維新を迎えたとのこと。伝統的な武士団として、また独立領主としての那須氏はやはり烏山城を出てこの佐良土城に入った瞬間に終わってしまった、と考えてもいいでしょう。

佐良土城は湯津上村役場の東、300mほどの場所にあり、その面影がよく残っています。完存ではなく、かといって湮滅でもない、この中途半端さがまた侘しくてたまりません。一応残っている部分から判断すると、40m×50mくらいの長方形の館だったのではないかと思います。もともと何らかの館があったんでしょう。とにかく「城」なんていうものじゃなくて、館、それも相当に小規模なもので、まさに蟄居謹慎するための場所といった感じです。たぶん、ちょっとした農家の屋敷の敷地よりも小さいんじゃないでしょうか。遺構は一応、二方向の土塁と、その周囲の水堀痕がよく残っています。まあ遺構が云々という場所ではなく、AMラジオで夜中につい聞いてしまった演歌のような侘しさを味わってほしいところです。

[2005.03.13]

遠目でもこんもりした土居が目立つ佐良土城。崩れた土塁の痕に、「佐良土城跡」の小さな道しるべが立っています。 那珂川と箒川の合流点方向を見る。手前の一段低い部分はかつての小川を堀とした部分でしょうか。
佐良土城の郭内。「よく残っている」わけでもなく「残っていない」わけでもない、その半端さがまた侘しさを演出しているようだ・・・。 一応、土塁なども残っていますが、神田城あたりと比べると悲しいほど小さい。
北側は土塁と、その下段の水堀痕がよく残っています。 河岸段丘の陸続きの西側に設けられた水堀痕。この写真の家の入口には「お城」の看板がありますが、これは何かのお店の名前でしょうか。
訪城記録

(1)2005/01/30

(2)2005/03/27

(3)2007/05/12

 

参考サイト

余湖くんのホームページ日本を歩きつくそう!

参考文献

「那須の戦国時代」(北那須郷土史研究会 編)

「栃木の城」(下野新聞社)

推奨図書

那須の戦国時代

下野新聞社 北那須郷土史研究会(編)

那須地方の戦国史を知るバイブル的な一冊。現在入手は難しいようだが、古本市場で見つけたら入手を推奨。

周辺地情報

那須氏栄光の時代を語る神田城烏山城などを見てください。

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