牛久城外郭 2002.04.13 |
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いわゆる『牛久城』(「城山」)というのは、牛久沼に突き出た半島状台地の先端附近、東南端にあたる部分に築かれているのですが、その外側、現在の城中集落全体に壮大な外郭遺構があります。いわゆる「大手門」の場所は牛久城とは相当に離れているように見えますが、この大手門のあたりから南、複雑な地形のあちこちにその遺構が見られます。かくいう自分も最初に牛久城に来たとき、牛久城本体の場所がわからずかなり道に迷ったのですが、そのときにあちこちに「これどう見ても堀だよなあ」と思うところを数箇所見ました(これは大手門向かって右手の坂の脇の空堀でした)。また二度目に来た時も入り口を間違えてしまいましたが、そのときも堀らしきものを見つけ、畑仕事をしていたおばあさんに「それは殿様がお城に行くときの道だよ」と教えてもらいました。そんなわけで断片的に外郭遺構に触れてきたのですが、今回、五郎さんの案内でその全貌を見せてもらうことができました。五郎さん、ありがとうございます。 広大な台地(しかも道が複雑)のことでもあり、地理勘をつかみきれていない自分は遺構の正確な位置や、それぞれの遺構が何を意味するのか、そもそもこのような広大な外郭部を誰が何のために築いたのか、など、わからないことは多々ありますが、とりあえず写真を中心にご紹介します。 |
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中世観測衛星「えちご」から見た牛久城周辺。画面上が北です。現在の牛久沼は水位の低下や周辺の土地改良で牛久城とは少し離れていますが、湖水(現在の湖水面は標高3m)を2mほど上げてみると、牛久城の周囲三方が沼や湿地に囲まれることがわかります。大手門は牛久城本体と遠く離れていますが、牛久城のある城中集落の台地全体の基部にあたります。あちこちに複雑に突き出した半島状台地のあちこちに外郭遺構が見られます。 ※左の画像はDAN杉本さん作成のフリーの山岳景観シミュレーションソフト「カシミール3D」と国土地理院発行の数値地図(1/5万および1/20万)を使用して作成しています。 |
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西側の東林寺城から見た牛久城の半島台地。正確には写真正面に写っている場所はカッパの碑がある牛久陣屋周辺で、いわゆる「牛久城」(城山)はこの写真の半島の裏手に当たります。 |
城中集落の得月院が今回の探索の起点。この得月院は由良国繁の母の菩提を弔ったもの。小田原の役の後、この賢母によって由良氏は改易を免れました。 |
大手門跡。得月院の北100mほど、城跡からは随分離れています。ここが城中集落の台地全体の鞍部にあたります。 | 大手門の碑に向かって右手斜めに細い道があります。この坂道沿いに素晴らしい遺構があります。 |
大手門附近の空堀。最初に牛久城に来たときに、「ここが牛久城か!」と思ってしまった場所(まあ牛久城の一部には違いないですが)。素晴らしいです。 | しかもこの堀、二重堀になっていました。斜面上段の堀は浅く、堀というよりは帯曲輪状の通路といった感じです。 |
大手からの坂を降りきった谷津。この谷津の道沿いの斜面(山林)を登ったところにもスゴイ遺構があります。遠くに見えるのは東林寺城の半島台地。 | これがその遺構、なんと三重堀です。しかも規模が大きいです。 |
同じく三重堀。冷静に考えると、ここに大規模な三重の堀を構築する意味合いっていうのがよくわかりません。 | 三重堀はひとつに合流し、城中集落の稲荷神社裏手まで続いています。それにしてもデカい・・・。 |
お城とは関係ないですが「カッパの碑」。この碑の案内はあちこちに立っているのに、これほど素晴らしい牛久城について何の案内もないというのも不可思議です。 | カッパの碑背後の畑周辺が近世の牛久陣屋。近世初頭に由良氏に続いて山口氏がここに陣屋を構えたとのこと。 |
陣屋周辺の堀。大半が山林化していますが、よく残っています。果たして中世牛久城の時代にはこの附近は使われていなかったのでしょうか? | 牛久陣屋の虎口と土橋。虎口前には馬出しを思わせるような箇所があり、道が半島の下に続いています。牛久沼の水運と直結した城戸であったのかも。 |
牛久城主要部の北側にある畑の中に残る土塁。この土塁の下の斜面に堀があります。 | その土塁下の堀。こういう斜面に沿った堀がいたるところで見られます。 |
これは二回目に牛久城に来たときに偶然見つけた堀。畑仕事のおばあさんによれば、殿様の登城路であったとか。 | 得月院東南の谷津の中にある遺構。堀、というよりも帯曲輪状の武者走り、というか通路だと思うのですが・・・。 |
同じく得月院東南の谷津にある長大な堀状遺構。これも堀と考えると不可思議な遺構ですが、牛久沼からの荷揚げなどを行った通路ではないかと思いました。 | |
素晴らしい遺構の数々を紹介してくださった五郎さん、ありがとうございました! なお牛久城およびその外郭遺構については、「UshiQネット」「美浦村お散歩団」「常陸国の城と歴史」「余湖くんのホームページ」「北総の秘めたる遺跡」などでそれぞれ素晴らしい記事がありますのでぜひご覧ください。 |