結城一族、長沼氏の居城

長沼城

ながぬまじょう Naganuma-Jo

別名:

千葉県成田市長沼

(長沼城址公園)

城の種別 平山城(丘城)

築城時期

不明

築城者

長沼朝教

主要城主

長沼氏

遺構

曲輪、横堀、土塁

長沼城遠景<<2003年07月05日>>

歴史

伝承では、戦国期に長沼五郎武俊が長沼城に拠っていたという。長沼氏の祖は結城朝光の五男、朝良であるとされ、朝良は下野国長沼荘に居住して長沼五郎左衛門と称したという。朝良の五代後の長沼朝教の時、この地に長沼城を築城し、大いに善政を布いたという。詳細不明。

長沼城は結城一族の長沼氏がこの地に住み着き、その善政を慕われて土地の名前にもなった、ということです。長沼氏は結城氏初代の朝光の五男朝良を祖とし、その後の長沼秀宗は永享の乱で足利持氏に与して自刃した、あるいは結城合戦において結城氏朝・持朝父子と袂を分かち、結城城を退転して、のちに自刃した、ともいわれます。この長沼氏に発する家系としては、下野の皆川城を居城とした皆川氏などもいます。築城時期もはっきりわかりませんが、「長沼朝教」という名前から察すると、六代将軍義教の偏諱を受けてるとも考えられ、想像を逞しくすれば、結城合戦で長沼氏の家内にもどちらに味方するか意見が割れ、幕府軍に着いた一族が新恩としてこの地を賜り築城した、とも考えられそうです。となると、築城は嘉吉年間頃かな。まあ想像ですが。

しかしここ成田は千葉氏の勢力範囲の真っ只中、戦国期には衰えたりとは云えども、名にし負う「千葉王国」の只中に結城一族が入り込む余地があったのかいな?そんな素朴な疑問が湧いてきます。千葉王国の首都である本佐倉城なんかも近いわけだし。長沼氏の善政を慕ってその名が地名になった、ともいいますが、それは如何なもんでしょう。すぐそばにはかつて昭和三十年代まで「長沼」という湖沼があったそうですが、沼にまで「長沼」という名を残す、というのも不自然かと思います。「余湖くんのホームページ」でも解説されているように、あくまでもこの地に住む豪族が長沼の地名を姓にした、と考える方が自然でしょうし、そう考えると「結城一族」っていうのも限りなく怪しくなり、千葉氏の一族か、あるいは千葉氏の縁戚となった在地土豪、と考える方が自然でしょう。

長沼城の遺構の特長としては、基本的に独立丘の頂部を均しただけの単郭のお城なのですが、周囲に横堀状の遺構が取り巻いているところでしょう。この横堀、帯曲輪と見るか横堀と見るか微妙な形ではあるのですが、どちらにしても主たる曲輪の城塁の下部に一段設けるという発想自体は一緒です。成田市内では広の台城や寺台城などに腰曲輪または帯曲輪状の遺構が見られるので、この地域にはこうしたお城が多いのかもしれません。あるいは、助崎城を筆頭に大須賀氏系のお城にもこうした特徴が見られますので、長沼氏の出自を含めて何か関係があるのかもしれません。独立丘であることと周囲が沼地であったことから、それ以外の防御はあまり見られず、堀切や水堀などはありません。土塁も顕著なものはなく、主郭の一部に古墳のような高まりがあるのみです。ここは櫓台だったかもしれませんが、あまりはっきりした形ではありません。

長沼城は成田市内で唯一城址公園として整備されているところだそうで、主郭周りは綺麗に整備されていますが、前述の横堀あたりは結局藪コギをするしかありません。ただあんまり人はいなそうなので、人目をはばからずに藪コギできるっていうメリット(?)はあります。

ひっきりなしに上空を飛行機が飛ぶ長沼城。「日本の玄関」成田の街でも、どっこい中世城館は生きている!

この後で訪れた広の台城からの遠景(中央やや右)。まっ平らな田んぼはかつての長沼。

主郭付近はあまり眺望が無いので公園の入り口付近から見る長沼。

木々に遮られて全く見晴らしの無い展望台から主郭を見る。楕円形の単郭の単純な構造がベースです。

小さいながらもしっかりと城址の標柱が。成田市はこういう標柱がしっかりしてます。ここは成田で唯一の城址公園だそうです。 主郭の南西端に突き出た櫓台状の構造物、というか、古墳にしか見えませんな。。。
これが当城最大の特徴、主郭下の横堀。まあ横堀と見るか、帯曲輪と見るかはかなり微妙ですが、とにもかくにも主郭の下を注意してみましょう。 横堀状帯曲輪(?)を分断するように伸びる土塁。敵の横方向の移動を妨げるためのものでしょうか。
この日、長沼城をはじめ成田市の中世城館の数々をご案内頂いた余湖さん、ありがとうございました!

 

 

交通アクセス

東関東自動車道「成田」ICより車15分。

JR成田線「久住」駅徒歩30分。

周辺地情報

広の台城が見所あり。お隣町の下総町の助崎城も。

関連サイト

 

 
参考文献 「日本城郭大系」(新人物往来社)、「房総の古城址めぐり」(府馬清/有峰書店新社)、「図説房総の城郭」(千葉城郭研究会/国書刊行会)、「成田市史」(成田市)

参考サイト

余湖くんのホームページ

 

埋もれた古城 表紙 上へ