攻城雑記その16

イラク戦争への抗議表明

13/03/04

先に、「邪悪な戦争」と題して、米英のイラクへの武力行使に対する危惧と日本政府の対応について意見を述べさせてもらいました。正直なところ、こうした一個人の趣味のサイトに過ぎないこのような場で、政治的発言をすることには躊躇いもあったのは事実ですが、戦争という問題解決方法を望まない、という感情は、「政治」という概念を離れて、あるいはこのサイトのもともとの趣旨を超えてでも、戦争に反対する一個人としてぜひ主張したい意見でありました。

しかしご存知のとおり、米英を中心とする連合軍はイラクに大規模な軍事作戦を仕掛け、連日に渡る空爆と地上戦で、イラク政権そのものよりも市民の生命や生活、そして上官の命で闘う末端の兵卒の生命に多大な被害をもたらしています。それらの被害を見聞きするにつけ、何らかの意見を述べずにはいられぬような、いたたまれぬ気持ちを抑えることはできません。何よりも、会見で薄笑いを浮かべながら戦争を語る、ブッシュ大統領、ラムズフェルド国防長官らの顔を見るたびに、この戦争の異常さ、狂気を感じずにはいられません。

今更、このような意見を述べても、何も変わらないかもしれません。しかし、意見を述べずに黙殺されてしまうことは何とも耐え難いものです。日本政府は戦争を支持しました。しかしそれはイコール、日本国民すべてが戦争を支持した、というわけではありません。そのため、自分は再度、この戦争に反対する意見を表明させて頂くとともに、米英ならびに日本政府の姿勢に異議を申し立てるものです。もちろん、この意見を読む、読まない、あるいは賛成、反対は読む方の自由です。いろいろな価値観、考え方があることを理解しています。しかし自分は思います。異なる価値観を力で押さえつけるのではなく、いろいろな価値観や考え方が共存できる世の中の方が素晴らしいと。

一.新たな国連決議を得ることなく武力行使に踏み切った米英を中心とする戦争推進派諸国に対し、厳重に抗議する。

国連査察の打ち切り、国連決議を得ない軍事行動は国際協調と国連の権威を貶め、強大国家による抑圧と国際緊張を招くものであることを、米英は認識すべきである。

米英は、イラク攻撃の理由を「イラク国民の解放」にすり替えている。もともとの理由であった「大量破壊兵器の所持」や「テロ活動への支援」について、なんら納得のできる証拠を示していない。

いかなる国家であれ、武力による政権転覆は民族自決の原則に反し、武力による内政干渉を肯定しかねない。イラクに民主主義政権を、という考え方は欧米的価値観に偏りすぎている。しかも、それを武力によって強制するにいたっては、何のための民主主義政権かと疑わざるを得ない。

今回の予防的戦争は、「先手必勝」の悪例を残しかねない。

米英は劣化ウラン弾などの環境破壊兵器やクラスタ爆弾、MOABなどの準大量破壊兵器を実戦で使用して、あるいは使用の可能性を持っている。これらは非人道的さにおいて、核兵器や生物化学兵器などの大量破壊兵器と、その本質はなんら変わるものではない。

精密誘導爆弾をはじめとしたハイテク兵器も、誤爆や市民の巻き添えは避けられない。戦火の下で死んでゆく非力な市民のもの言わぬ声に耳を傾けるべきである。

戦争遂行を命ずる人間は、米大統領、英首相をはじめとした国家元首とその幹部であり、それに対して敵であれ味方であれ、命を落としたり、家族や家屋を失ったりするのは常に弱小な市民や末端の兵士である。

大量破壊兵器の破棄と軍縮には、世界一の軍事大国である米国がまず規範を示すべきである。

戦争の長期化は、パレスチナ問題の緊張誘発や、周辺イスラム国家の政権運営に深刻な影響をもたらし、周辺諸国の治安を極度に悪化させる恐れがある。

戦争という解決手段は長期にわたる憎悪を招き、新たなテロリズムを誘発しかねない。そもそも武力による解決という手法自体が、国家レベルによるテロリズムであることを戦争遂行国は認識すべきである。その憎悪が解けるには、想像を絶する長い年月が必要であることを認識せねばならない。

バグダッドは人類の文明史を語る遺跡の宝庫でもある。人類共有の文化遺産を空爆で失うことがあってはならない。

戦争は、世界経済にも大きな影響を及ぼしかねない。


一.併せて、土壇場まで自国の姿勢を明らかにせず、なし崩し的に米英支持を表明した日本政府に対しても、厳重に抗議する。

日本が国際議論の最中にその姿勢を明確にしなかったことは、日本外交の権威を貶め、国益を損ずる行為である。

同盟を理由とした戦争支持は、集団的自衛権をなし崩し的に肯定する拡大解釈に繋がりかねない。憲法が持つ条文だけでなく、その法の精神に謙虚かつ忠実であるべきである。

日本は、同じアジアブロックに属する中東諸国の緊張に対し、積極的に平和外交を展開すべき立場にありながら、様子見の挙句に米英追従路線を選択したことは、今後のアジア圏における立場を失う選択であると言わざるを得ない。日本がその外交姿勢を鮮明にしなかったことで、戦後の処理についても資金拠出以外の役割になんら主導権を発揮できなくなった。

日本政府は世論の反戦論に耳を傾けるべきである。

最後に一言。

これ以上、民間人の犠牲を出すのはやめてくれ!

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