臼井田宿内砦 (2003.03.21)

千葉県佐倉市臼井田

臼井城とは別なお城として紹介するべきなのかもしれませんが、臼井城なくしてこの臼井田宿内砦の存在は語れないと思いますので、臼井城の項でご紹介します。

下総の誇る名城・臼井城には、この臼井田宿内砦をはじめ、洲崎砦、仲台砦、稲荷台砦、田久里砦など、臼井城の惣構えを構成すると見られる支城・支砦群が衛星状に配置されています。これらが臼井城の支城であるという直接的な証拠は無いようですが、その立地条件や配置図を見れば、臼井城との関連は一目瞭然です。これらはおそらく戦国後期にかけて、臼井城を本拠とするようになった原氏の指揮下で築城されたものなのでしょう。上杉謙信の臼井城攻めにあたっても、こうした支城・支砦群の存在は寄せ手の背後を脅かす脅威になったのではないでしょうか。

中でもこの臼井田宿内砦は、周辺の砦群でほぼ唯一、明瞭な遺構を残す砦として、非常に貴重です。「宿内公園」として整備されており、犬の散歩の方などでそこそこ人通りも多い公園でしたが、実は個人所有地で、所有者の好意により公園として開放されているのだそうです。所有者の見識の高さに敬意を表します。

遺構としては、広大な主郭とそれに付随する腰曲輪、櫓台を含む高い土塁があり、その土塁の下には埋まってはいるもののかなりの規模を持つ堀切の痕跡があります。ここから台地上の宅地に向かって幅の狭い鞍部があり、その付近までが城域であると思われます。周辺の砦が痕跡すら残さず宅地化している中で、小規模な城砦がらこれほどの遺構が残ったことは非常に喜ばしいことです。

場所はやや分かりにくい場所にあります。臼井城の主郭から見ると南側に突出した山林が見えます。距離的には500mくらいでしょうか。成田街道沿いに「臼井郵便局」があり、その向かいに民家の入り口のようにしか見えない公園入り口があり、小さな看板が出ています。とりあえず郵便局を目印に歩きましょう。

臼井城主郭から南方に500mほど、こんもりと突き出た丘が臼井田宿内砦。臼井城を取り巻く砦群でも、ほとんど唯一明瞭な遺構を残しています。 臼井城下を南に歩き、「中宿」交差点を超えて200mほど行くと、郵便局の向かいにこんな目立たない看板があります。
臼井城とりで跡です」というごく簡単な看板。宿内公園は私有地で、地権者の好意によって開放されています。有難いことです。 主郭へ向かう途中の斜面には、帯曲輪と思われる遺構がありました。
主郭の北東には、1m強の段差を持つ腰曲輪らしきものがあります。 主郭から見た腰曲輪。単純な遺構ではありますが、小規模な砦とはいえきちんと主郭を防御する遺構があるのは貴重です。
結構広い主郭。綺麗に整備されています。 主郭の南西方向の台地続きには土塁が見られます。虎口らしき場所に向かって、一段高い櫓台まで見られます。
主郭櫓台。結構本格的です。砦、というよりも、立派な城郭遺構です。 主郭虎口と土塁。この土塁の切れ目がおそらく当時の主郭と思われます。土塁は主郭のこの方面にしかありませんでした。
主郭の土塁下には、埋もれて浅くなってはいるものの、幅の広い堀切の痕跡があります。往時はそれなりの深さがあったことでしょう。 この主郭南西の一段低い場所を二郭と見るかどうかは微妙ですが、削平されているらしいことや台地続きの鞍部が狭いことから二郭と判断しました。
これがその台地続きの鞍部。おそらく、かつては堀切と土橋だったのではないでしょうか。 木々の間から姿を見せる印旛沼。

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参考文献

「千葉県中近世城跡研究調査報告書 第4集」(千葉県教育委員会)、「図説房総の城郭」(千葉城郭研究会/国書刊行会)

参考サイト

余湖くんのホームページ

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