上関城は、荒川の蛇行点の断崖上に築かれており、非常にわかりやすい要害となっています。「ミニ鉢形城」ってところですかね？そんな大したもんじゃないか（笑）。立地条件からすれば、陸の米沢街道、荒川の水運の両方を押さえられ、また会津や米沢の奥州勢への備えとして、非常に重要な要衝であることがわかります。そういう意味では、居住を目的とした城、というよりは、本城である平林城の支城としての「番所」「番城」的な要素のほうが強いですね。

城址は、「温泉橋」という橋の西側の付け根にあり、また県道沿いに石碑もありますので見つけるのに苦労はしないでしょう。土塁・空堀の遺構も非常にはっきり残っています。ただし、整備は全くされておらず、バラ科の植物が覆い繁っていますので、見学には長袖・長ズボン（←って最近はあんまり言わないよな）が必須です。本丸は崖の上なので、調子に乗って崖から川に落ちないように注意。

<<追補：上関城再訪2002/05>>
まだ藪の少ない5月、再訪しました。この城の特徴は、近世平城にも繋がる、直線的で理路整然とした、非常に端正な縄張りにあり、小規模な城郭ながら崖端の立地ともあわせ、見所の多い城郭だと思います。今回は特に堀に注目してみました。前回は藪でほとんど見えなかった横矢や堀を横切る土橋などとともに目を引いたのが、四郭と二・三郭にまたがる堀につくられたふたつの障壁。「障子堀」というほどの規模ではありませんが、堀底の通行を遮断し、敵兵を攪乱させる巧妙な構造だと感じます。この障壁ははじめは土橋かと思いましたが、郭に虎口らしい遺構が見えなかったことから障壁と判断しました。ただ、四郭には鉤型の土塁があり、枡形を象っているようにも見えるため、少なくとも二つのうちの一つ（二郭に通じる障壁）は、単なる障壁ではなく土橋を兼ねているかもしれません。もっと言えば、この四郭は一部が県道工事や宅地造成で破壊されていて判然としないものの、郭というよりは馬出しだった可能性もあります。基本的に未整備なので個々の遺構を明瞭に観察するには不向きですが、興味深い城ではあります。