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浅貝寄居城

                                                  

あさがいよりいじょう Asagai-Yorii-Jo

別名:

【浅貝寄居城の残存曲輪】

 <<2004年05月01日>>

所在地

新潟県南魚沼郡湯沢町三国

※ホテルムサシ裏手

埋もれた古城マップ:新潟編

交通アクセス

関越自動車道「湯沢」ICより車30分。

行き方・注意点 R17「苗場スキー場入口」交差点の東南約150m、ホテルムサシの裏手の山林に標柱がある。

【基本情報】

築城年 元亀二(1571)年 主要遺構 曲輪、土塁、堀痕(部分)
築城者 栗林二郎左衛門尉、大石惣介 標/比/歩 標高930m/比高0m/歩高0m
主要城主 栗林二郎左衛門尉、大石惣介 現況 山林、ホテル敷地

【歴史】

上杉謙信が元亀二(1571)年、前関東管領・上杉憲政の要請で栗林二郎左衛門尉政頼、大石惣介芳綱に命じて築城させたことが元亀二(1571)年に比定される五月二日付けの両人宛の書状に見え、また五月二十六日の栗林二郎左衛門尉宛の書状では「浅貝之寄居」の普請が成就し、軍役のほかに五十余人の足軽を取り置くよう命じている。

【雑感】

生涯で十三回とも、十五回とも云われる上杉謙信の関東進攻、いわゆる「越山」にあたり、三国峠越えは主要な軍道として重要視されました。三国峠は日本海側と太平洋側を隔てる、日本の脊梁山脈を越える峠ですが、峠そのものは標高1500mほど、代表的な高峰である谷川岳でも2000m弱ほどしかありません。しかし、雪国越後と関東との国境に聳える山々は気候が非常に変わりやすく、その難しさは3000m級の山に匹敵する、とも云われます。現代ですら、毎年のように谷川岳周辺での遭難事故が絶えないことを思えば、謙信の時代、それも積雪が5mを超える真冬にこの峠を越えるということがいかに苦難に満ちたものであったか、想像を絶するものがあります。おそらく、多くの兵卒が凍傷に斃れ、あるいは滑落したり、雪崩に巻き込まれたりしてその命を失ったことでしょう。

浅貝寄居城はその三国峠のまさに直前、越後での最後の一夜を過ごすために謙信によって設けられた、関東出撃への宿営所です。この「寄居」という言葉の響きからも分かるように、攻防戦を繰り広げるような城砦ではなく、普段は数十人の足軽などを交代で置いて守らせ、いざ謙信が関東に出撃する際には、三国峠の手前で隊列を整え、一夜を過ごして峠越えに備えるという、「旅宿」とでもいうべきものでした。この浅貝という集落は、今でこそ苗場などのスキーリゾート地になっていて、幅の広い国道十七号が貫通し、国道沿いにはホテルやリゾート施設、お店などが立ち並んでいますが、もともとは謙信がこの三国越えのルートを確保するために、計画的に配置された集落であるという説もあります。こうした集落は上杉軍道沿いに他にもあり、それぞれの集落自体が「寄居」的な機能を持っていたと思われます。もっとも、謙信が一番盛んに関東に出撃していた永禄年間にはまだ城館と呼べるものは存在せず、「越相和睦」後の武田軍の動きに対処すべく、上田衆の栗林氏らに命じて急遽取り立てた、ということですから、国境防衛の意味も多少はあったでしょう。

浅貝寄居城はもともとは段丘上に三郭程度が並んでいたようですが、現在はスキーリゾート地の真ん中に、方20mほどの主郭のみがポツンと残っています。場所はちょっとわかりにくいですが、国道十七号沿いの「ホテルムサシ」裏手、ダイヤパレスのリゾートマンションの駐車場脇になります。一枚の写真に全景が収まってしまうほどの狭い範囲ではありますが、これでも、何も残っていないよりははるかにマシで、辿り着いた時には嬉しくなりました。一応、主郭には土塁や、周囲の堀跡の一部が残っています。主郭、といってもちょっと大き目の小屋一軒分くらいの広さしかないのですが、そこがまた「寝るだけの場所」っぽくてイイじゃないですか。「謙信はここで酒呑んで、大イビキかいて寝てたのか」なんて考えると、楽しいではありませんか!

[2004.06.02]

残雪捨て場になってしまっていた浅貝寄居城の残存曲輪。ここで謙信公は翌日の三国越えに備え、杯を傾けながら鋭気を養っていたことでしょう。

一応、史跡標柱などもありますが、すっかり残雪に埋もれてしまっていました。

何とか残った北東辺の土塁。背後の低い場所は堀痕でしょうか。とにもかくにも、なんとかその形状を偲べる程度に残ったことは幸運というべきでしょう。 曲輪内から見る土塁。およそ1m強、曲輪の大きさも20×25mほど、お世辞にも堅固とはいえませんが、お城というより旅宿とでもいうべきものなのでしょう。
訪城記録

2004/05/01 (1)

2006/11/04 (2):ヤブレンジャー仙当城ツアー

参考サイト

 

参考文献

「図説中世の越後」(大家健/野島出版)

「日本城郭大系」(新人物往来社)

「龍ヶ崎の中世城郭跡」(龍ヶ崎市教育委員会)

「上杉家御書集成T」(上越市史中世史部会)

「疾風 上杉謙信」(学研「戦国群像シリーズ」) 

推奨図書
図説中世の越後―春日山城と上杉番城 (大家 健)

越後の代表的な中世城館を豊富な縄張り図で解説。通史や中世の地形を理解するにも役立つ。入手困難だが時折中古市場に出ているので見つけたら購入をオススメ。 

周辺地情報

芝原峠の真上に位置する荒戸城が素晴らしいです。