【土浦市内の交差点(茨城県)にて】 2003.06.21

以前、掲示板でも紹介した交差点である。右折レーンに入ると、中央分離帯になにやら看板が・・・。

「何、右に曲がんの?」・・・・たったこれだけのイタズラ看板から、果てしないストーリーの世界が拡がる・・・。

場所は郊外の住宅地、昭和四十年代に建てられた、いわゆる平屋木造の「共同住宅」である。物干し棹には布団が干されている。その狭い庭先に、40代も半ばを過ぎた女性がまだ1歳の子供をおぶっている。むろん、髪型はオバサンパーマだ。色あせした赤いトレーナーに紺のズボン、足元は近所のスーパーで15年前に買ったサンダルである。背中では子供がやっと寝ついたところである。と、狭い住宅街の路地に一台の車が入ってきた。この女性の家の角で曲がりたいらしいが、道が狭くて切り返しに苦労している。昼下がりの静かな住宅街に、四苦八苦する車のエンジン音が響いている。ふと、低い垣根越しに、途方に暮れるドライバーとこの女性のくたびれたような目があう。
「何、右に曲がんの?」

アンニュイな午後のひとコマである。

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